マネジメントから見るリモートワーク、在宅勤務について

マネジメントから見ると、リモートワークや在宅勤務を認める組織は非常にコントロールしづらい組織であるといえます。
なにしろメンバーが今何をやっているのかまったく見えません。
組織のメンバーから見れば、さぼろうと思えばいくらでもさぼることができる環境なのです。

それでもリモートワークや在宅勤務を認める会社が増えていることには理由があります。

  • リモートワークや在宅勤務は多様な働き方に対応するのに便利であること。
    たとえば、子持ち、特に1歳~2歳くらいの幼児がいる、あるいは介護している親がいる、といったどうしても家にいなければならない理由がある社員にも働いてもらえるようにするのに便利です。
  • 通勤時間の無駄がなくなる。
    東京ですと電車通勤の人がほとんどだと思いますが、電車の中でそれも朝夕のラッシュ時に本や新聞、ニュースから情報を得るのはとても大変ですね。
    なくてすむならないほうがいいのが通勤時間です。
  • パフォーマンスが上がる。
    優秀であればあるほど、自由を与えられるとパフォーマンスが上がると言います。
    だから、許可制を敷く会社もありますね。その人の成績に応じて在宅勤務を〇日認める、みたいな。
    それが、もっとも正攻法だと思います。
    自己管理ができない人間を自由にすると何もしなくなるケースもあって、そのあたりのフィルターは必要でしょう。

 
それでは私がマネジメントする組織でリモートワークや在宅勤務を実際に運用して約4年、効果のほどはどうだったかといいますと。
正直、長短あります。
なんかチームなのに1+1=3になりにくい。相乗効果皆無。
なんとなくわかってやってたところはありますが、1+1=2 です。
アイデアにしろ業務効率にしろ、化学反応は起こりにくい。起こすには従業員を巻き込む「ムードメイク」をしなければならないです。
人の迷惑顧みず、明るくつねに挑戦的で、強引にでも物事を進めようとする腕力のある人物が、人数を集めてアイデアを昇華させるための“場所”を用意する必要があります。

これについては、努力が必要です。
音頭をとる人間がマネジメントじゃなくてもいいのですが、そういうムードメーカーを社内で捕まえ、マネージャーがバックアップしてそういう“場”を意図的に作り上げる努力。
1+1=3の場が自然発生的には現れ得ないのがリモートワーク集団の本質なのかもしれません。
 
と、ここまで書くと、なんだ大した成果はなかったのか?と思われるかと思いますが、それを飲み込んで余りある大きなメリットがあります。

  • 採用コストが下がる

これは今のところ私の体感として確信を持って言えます。

良きにつけ悪しきにつけ、人との接点が減るという事は人間関係における緊張状態が緩慢になるということは言えそうです。
つまり、毎日出社して席の隣にいつも誰かがいる環境と比べて何をやるにしてもコミュニケーションコストがかかる代わりに、人間関係における衝突や摩擦の絶対量が減ります。
 
人が転職をする理由の第2位か第3位が「人間関係」です。
リモートワーク、在宅勤務を認めると、定職率は相当上がります。

結論として、経営を安定的に運営するために「リモートワーク、在宅勤務」は良い制度だと思います。
 
 
さて、もう一歩思考を進めて、未来の会社の働き方というものを考えると、時と場合によって、リモートワークをやったりやらなかったりを柔軟におこなう会社というのが最終的には求められる組織像であるような気がします。
リモートワークは確かに優れた制度だと思いますが、会社がなにかブレイクスルーしようとするときには、リモートワーク一辺倒では強い組織にはなりえないでしょう。
ブレイクスルーを成し遂げる現場にはとてつもない量の会話があります。
生まれるはずのなかったサービスが会話によって生まれ、会話によって昇華し、会話によってとてつもないスピード感を生んで、いとも簡単に作り上げられたりします。